もっと簡単そうな、僕でも読めそうな本とかないのかなぁ、と。

本棚から本棚を見て回り、物色したが。

なかなか読めそうな本は見つからない。

せめて、もうちょっと薄い本じゃないと。

とてもじゃないけど、この辞書みたいに分厚い本は、歯が立ちそうにない。

すると。

「…あ」

本棚の上の方に、ちょっとした冊子みたいな薄い本が並んでいるのを見つけた。

背表紙までは見えないけれど、どうやら雑誌のようだ。

本じゃなくて雑誌なら、何とか読めるかもしれない。

そう思った僕は、それらの雑誌に手を伸ばした…の、だが。

「…」

僕の短い手は、どんなに背伸びしても、到底その雑誌まで届かなかった。

…どうしよう。何か方法はないだろうか。

きょろきょろと周囲を見渡し、使えそうなものを探す。

すると。

部屋の隅の方に、古ぼけた踏み台を見つけた。

あれだ。あれを使おう。

その踏み台を、ずるずる、ずるずると本棚の下に引き摺ってきて。

よいしょ、と踏み台の上に乗ると。

ようやく本棚の半分より上まで手が届いたけれど、踏み台に乗ってもなお、僕の背丈より本棚の方が背が高かった。

「…うー…」

精一杯背伸びをして、短い手を懸命に伸ばして、爪先立ちをした身体をぷるぷると震わせ。

幼い頃の僕は、何とか本棚の上の方にある雑誌を取ろうと頑張った。

あとちょっと…。あとちょっとで、手が届きそう。

…あまりに必死になっていた為、僕は、後ろの方で物音がしたことも全く気づいていなかった。

気づいたのは、背後から声をかけられてからだった。

「…誰かそこにいるのかい?」

「えっ?」

突然人の声がして、僕はびっくりして振り向いた。

その拍子に、踏み台の上でバランスを崩した。

非常に不安定な体勢だったものだから、そうなるのも当然だった。

「…!」

「っ、危ない!」

ぐらりと身体が倒れ、踏み台からすっ転びそうになった。

思わず、強くぎゅっと目を瞑ってしまったが。

踏み台から足を滑らせた僕の身体が、床に叩きつけられることはなかった。

床に落っこちる前に、誰かが僕の身体をしっかりと抱き止めた。

「…大丈夫かい?」

「ふ、ふぇ…?」

びっくりして、恐る恐る目を開けると。

そこには、僕の身体をぎゅっと抱き締め、心配そうにこちらを見下ろす加那芽兄様の姿があった。