「これも駄目なのか?じゃあこっちはどう?」

また、新しいアロマオイル。

この匂い…。今度は結構スパイシーですね。

何処かで嗅いだことがある匂いだけど、これは何だったかな…。

「あー、これ知ってる…。なんか、料理してる時に嗅いだな」

「これはナツメグの香りですね」

即答する唱先輩。さすがです。
 
そうだ。これ、ナツメグの匂いだ。

結構刺激的な匂いで、これは好き嫌い分かれそうですね。

「なつめぐ、って何?李優」

「よくハンバーグに入れるスパイスだな。独特の風味がある」

へぇー、そうなんですか。

スパイシーな香りだから、あまりリラックスは出来ない気がする。

「唱先輩…どうですか?リラックス効果のほどは…」

「全然出来ませんね」

「…ですよね…」

僕はこの香り…嫌いじゃないんですけどね。

「むむっ。唱君、厳しいな…。じゃあこれは?」

「一体何種類あるんですか?そのアロマオイル」

「これでラスト」

と言って、最後に出したのは。

あ、この匂いも知ってる。

甘くて上品で、エキゾチックな香り。

「えぇっと…。これは何の匂いでしたっけ」

香水でもよく使われる香りですよね。

すると、萌音先輩が衝撃発言。

「李優のお部屋の中みたいな匂いがする」

「マジ?俺の部屋ってこんな匂いしてんの?」

李優先輩御本人もびっくり。

良い匂いしてるんですね、李優先輩の部屋…。

「どうよ、後輩君。この香りは何か知ってる?」

「う…。済みません、これはちょっと分からないです。嗅いだことはあるんですけど…」

「じゃあ唱君。知ってる?」

「これはジャスミンですね」

唱先輩、即答。

ジャスミン。成程、言われて思い出しましたよ。

それだ。

「ジャスミンと言えば、甘くてエキゾチックな香り…。俺は嫌いじゃありませんけど、今は気持ち悪いですね」

「え、何で?」

「部屋の中に色んな香りが混ざり合って、絶妙な香りのハーモニーが生まれてるんですよ」

窓を開けているとはいえ、一度染み付いた香りはなかなか消えない。

ましてや、嗅覚が鋭敏な唱先輩にとっては、地獄の香りに感じるのだろう。

部室の中に、ヒヤシンス、ベルガモット、ペパーミント、ナツメグ、そしてジャスミンの香りが混ざり合っている。

それぞれ単体は良い香りなんだけど、混ざると何とも言えず…。

…リラックスとは程遠い。

ますます、健康から離れている気がしますね。

今度から、アロマオイルは一種類に絞りましょう。