まぁ、でも、そうですよね。

こうして、パクチー風味のプロテインが、当たり前のように市販されてるってことは。

一定層に、それなりの需要があるってことだし。

ほら、納豆みたいなものですよ。

好きな人は好きだけど、嫌いな人はとことん嫌い。みたいな。

人を選ぶ飲み物。ってことですね。
 
果たして、僕はどうだろう…?

「…」

コップの中の、緑色に濁った液体をじっと見つめる。

…睨んでるだけじゃ、中身はまったく減らないので。

そーっと、恐る恐るコップを口元に近づけ。

そーっと、まずはその匂いを嗅いでみる。

噎せ返るような、パクチーの独特の香り。

その中に、ほんのりと、まろやかで甘い香りのようなものも感じる。

こ、これがプロテインなんですか…?とても美味しそうには見えない。

パクチーの強烈な匂いと、ほんのり甘い香りで頭と鼻が馬鹿になりそう。

萌音先輩…。どうして、スタンダードに…バニラ味やチョコ味を買ってきてくれなかったのだろう…。

僕は意を決して、コップに口をつけてみた。

南無三。

生暖かい液体を一口、口に含んでゴクリと飲み下す。

飲み込んだパクチープロテインが、胃の中に届くなり。

「…ぐはっ!」

本能的な拒絶反応を起こした僕の胃袋が、大反乱を起こしたのだった。

「あ、やっぱり駄目だったかー」

「小羽根さん。顔が青いけど大丈夫ですか」

全然大丈夫ではありません。

どころか、あまりの不味さに気が遠くなる始末。

筋肉痛に苦しめられるわ…とんでもない味のパクチープロテインを飲まされるわ。

僕、何か悪いことしたっけ…?