全身の筋肉痛を堪えながら、加那芽兄様に事情を説明すると。

加那芽兄様、爆笑だった。

「…笑い事じゃないですよ。加那芽兄様…」

人の不幸を嘲笑うだなんて。趣味が悪いですよ。

恨みがましく加那芽兄様を睨むと、加那芽兄様は笑い過ぎのあまり涙を滲ませながら、

「いやいや、ごめんごめん。そんなつもりはないんだけどね」

じゃあどんなつもりなんですか。

「挙動がおかしいなぁとは思ってたけど、そうか。筋肉痛かぁ…。それは予想外だったな」

「…」

「まったく、小羽根はいつも私の予想を上回ることをするなぁ」

…それは嫌味ですか。

「…悪かったですね…」

いい加減にしないと、そろそろ泣き出しますよ。

「いや、責めてるんじゃないんだよ。そういうところも含めて、私は小羽根のことが大好きだからね」

「…笑顔で言われても、嬉しくないですよ…」

それって要約すると、いつも間抜けで微笑ましいってことでしょ?

「そうか。健康追求部か…。高校生は面白いことを考えるものだね」

「心霊研究部じゃなくなったのは、有り難いですけどね…」

だからって、筋肉痛は辛いですよ。

明日には治ってると良いなぁ。

「大丈夫だよ。痛いのは初日だけで、毎日やってれば身体が慣れてくるから」

「うぅ…。そうだと良いんですけど。毎日はやりたくないですね…」

「スポーツだけが健康を追求することではないからね。食事、睡眠、運動の適切なバランスを保ってこそ、健康を維持出来るんだから」

そう。その通りですよ。

まほろ部長に聞かせてあげたい。

「筋肉の疲労回復には、良質なタンパク質とビタミンが不可欠だよ。さぁ小羽根、朝ご飯を食べて」

「…はい…そうします」

「それと、身体が痛いなら、今日は私が車で学校まで送ってあげるよ」

「…加那芽兄様…」

加那芽兄様が、天使の使いみたいに見えた。

今日ばかりは、楽をすることを許してください。