今日は天気も良いからと、中庭で朝食を摂ることにした。

テーブルに並ぶのは、スープとサラダ、エッグベネディクト、小さくカットしたフルーツを添え、蜂蜜を垂らしたヨーグルト。

それから、素敵な香りが立ち昇る、淹れたての紅茶。

「さぁ、どうぞ。小羽根」

「ありがとうございます…」

非常に優雅で、リッチな朝食である。

…何度も言いますが、筋肉痛に苛まれていなければ、の話ですけど。

ティーカップに伸ばした手が、鈍く重い痛みを訴える。

うぐっ…。

「…?小羽根、どうかした?」

「えっ?いや、あの…何でもないです」

まさか、筋肉痛が辛いんです、なんて恥ずかしくて言えず。

僕は、曖昧に微笑みながら紅茶を啜った。

うん。非常に良い香り。芳醇で美味しい。

いつもだったら、この香りを嗅ぐと心がホッと休まる。

でも、今は…。

…筋肉痛に苛まれ(ry。

「ストレートで飲んでも勿論美味しいんだけどね、この茶葉はミルクティーがよく合うんだ」

と言いながら、加那芽兄様はミルクが入った小さなポットを差し出してくれた。

「はい、小羽根。お好みでどうぞ」

うっ。と思ったけど。

勧められている手前、断ることは出来なかった。

(筋肉痛のせいで)ぷるぷると震える手を伸ばして、ミルクポットを手に取ろうとしたけど。

「あ、ありがとうございま…あいたたたた」

「え、ちょ、小羽根。大丈夫?」

伸ばした時の二の腕の痛みに耐えきれず、思わず情けない声が出た。

「だ、だだだ、大丈夫です…」

「全然大丈夫なように見えないけど…。もしかして…紅茶、美味しくなかった?」

「い、いえっ…。全然っ…そんなことは…」

違うんです加那芽兄様。紅茶のせいじゃなくて。

僕の日頃の運動不足のせいなんです。

「…美味しくなかったら、無理しなくて良いんだよ。いつもと違う茶葉だから、口に合わなかったかな」

「ほ、本当に違うんです。紅茶は美味しいんです。ほんとにっ…いたたたた」

思わず無意識に身を乗り出しかけて、そして今度は脇腹の痛みに呻いた。

今の僕、最早全身が急所みたいなものですよ。

「…小羽根、一体どうしたの?何だか今日…挙動がおかしいよ」

「ぎくっ…」

「何かあったの…?」

加那芽兄様の、この心配そうな顔。

…ここまで心配されてしまったら、最早情けなくとも、洗いざらい白状する他なかった。