「よしっ!休んでる暇はないぞ。次はスクワットだ!」

そんな。ちょっとくらい休ませてくださいよ。

でも…身体を床に伏せて行う、腕立て伏せに比べれば。

立ったまま出来るスクワットは、もっと楽かもしれない。

そう思って、スクワットを甘く見た僕が愚かだった。

「はい、足を肩幅に開いて!開き過ぎるなよ。膝を真っ直ぐ下ろす!はい、いーち!にーぃ!さーん!」

うぐぐぐ…。慣れない身体でスクワット、結構キツい。

腕立て伏せと同じ。最初の数回は良いんだけど。

段々と、回数を重ねるごとに疲労が蓄積していく。

腕立て伏せより楽だと思ったけど、全然そんなことはなかった。

「じゅー、さん!じゅー、し!」

「ひ、膝が…膝が痛いです…」

「甘ったれるな!正しいフォームでやれば、膝が痛むことはない!」

そ、そんなぁ。

「じゅ、じゅーろく、じゅーっ…ななっ…!」

まほろ部長も死にそうになってません?

段々声が震えてきてますよ。

「じゅー、はちっ…。…あぁもう無理っ!」

その場に座り込むまほろ部長。

「スクワットつれぇー!膝いてぇー!」

「…部長も正しいフォーム出来てないんじゃないですか…」

何で今、僕だけ怒られたんですか?

理不尽にも程がありますよ。

一方、マットの反対側では。

「う〜。出来ないよー」

「お前…もう腹筋は諦めろ」

もごもご、うごうご、とマットの上で芋虫みたいにのたうっている萌音先輩。

と、それを呆れたように見ている李優先輩がいた。

…もうめちゃくちゃですよ。

「これ、健康追求出来てます?ただただ疲労が溜まっているだけなのでは?」

その通りです、唱先輩。

何とか言ってやってください。この部長に。

しかし、まほろ部長は。

「何を甘ったれたことを!貴様ら!これからグラウンドを全力ダッシュ、10周だ!」

えぇぇぇ。

「ほら行くぞ!まほろ隊長についてこい!」

「いつから隊長になったんですか…」

「えぇい!つべこべ言うな!」

理不尽。

部長にパワハラされたって、学生課に言いつけてやろうか。