小羽根と自由な仲間達

健康…追求部…ですか。

「それって…何をする部活なんですか？筋トレ…？」

「筋トレも勿論するぞ。…しかし、筋トレだけじゃあ健康を追求しているとは言えない」

そ、そうなんですか？

「筋トレ部にしてしまったら、まほろさんは続かないんですよ」

同じく体操服姿の唱先輩が言った。

「続かない…？」

「以前、スポーツ研究部だったことがあるんですけど、走るのが嫌だからって三日目でやめたんです」

…そういえば、そんなこと言ってましたね。

成程、それじゃ駄目ですよ。筋トレだけしてるんじゃ続かない。

何なら、明日には「筋肉痛がいてぇ〜！」とか言ってそう。

慣れないことはするものじゃありません。

「従って、この部活は運動のみならず、健康を追求する為に必要なことを何でも、色々やる！という部活だ」

「そうなんですか…。一体何処から着想を得たんですか…？」

この間まで、ホラー映画だのゾンビゲームだのやってた人が。

突然、今度は健康ブームに目覚めるなんて。

取っ替え引っ替え過ぎるでしょうよ。

「最近、『frontier』が某健康食品メーカーとコラボして、動画で宣伝してたらしいんです」

と、唱先輩が説明してくれた。

『frontier』って、まほろ部長が熱を上げてるアイドルグループですよね。

成程…。『frontier』が「健康に気をつけましょう！」って宣伝してたから、それを見て…ってことですか。

「まほろ部長の思考回路は…いつも単純ですね…」

「いってぇ！後輩君の嫌味が突き刺さる！」

あぁ済みません。嫌味のつもりはなかったんですけどね。

この人、『frontier』が宣伝してたら、何でも飛びつくんだ。

何にでも興味を持つのは良いことだと思うけど、何もかも三日坊主で終わらせるのはどうかと思います。

まぁ、でも良いや。

僕としては助かりましたよ。

だって、本人が仰る通り、健康追求部なら健全じゃないですか。

何より、心霊研究部じゃなくなったのは大変、大変有り難い。

これで少なくとも、恐ろしいホラー映画や心霊写真を見せられることはなくなった。

それだけで、心からホッ。

喜んで腹筋でも、腕立て伏せでもやりますよ。

「さぁさぁ後輩君！君も筋トレを始め給え」

「え、まずは準備運動からじゃないんですか…？」

いきなり身体を動かすのは良くありませんよ。

まずはストレッチをして、身体の筋肉をほぐして…。

「うぉぉぉ！目指せ、ダンベル100キロ〜っ！！」

とか言いながら、腕立て伏せを再開するまほろ部長。

…ウエイトリフティングでもやるつもりですか。

「努力の方向性を…間違えてる気がしますね」

「…それを言うな」

呆れたような表情で、李優先輩が呟くのだった。