「ノートの中身…?自分のじゃないから、よく見てないけど…」

ほ、本当ですか。

助かった…。

「そ、そうですか…良かった…」

「ねぇ、小羽根君」

「…何ですか?」

「第二の惑星ってどんなところなの?」

うわぁぁぁぁ。

「人の言葉を喋れる宇宙人って、やっぱり人間なの?人間が別の惑星にいるの?」

興味津々の久留衣先輩。

「し、しっかり読んでるんじゃないですか!」

「第三の惑星は、小人と巨人が共存してる惑星、とかどうかな?」

ネタ提供ありがとうございます。

でも、そうじゃない。そうじゃないんだ。

「違う、言わないでください久留衣先輩。それ以上はだ、」

「最初の主人公の回想が面白かったな。『私はこの青い惑星に絶望した。最早、ここに希望はない…』って」

いやぁぁぁぁぁ謎の声真似やめてください。

死にたい。猛烈に死にたい。

「何々?何の話?このノート?」

「へぇ。これもしかして、小羽根さんの黒歴史的ノートなんですか?」

「おい、お前ら勝手に…」

あろうことか。

天方部長と弦木先輩が、僕の小説ノートを開いて覗き込んでいた。

佐乱先輩が咎めたけれど、時既に遅し。

うわぁぁぁ。

「か、返してくださいっ…!」

「へぇー、SFモノ?面白そう」

「小羽根さんにこんな趣味があったとは。意外ですね」

「小羽根君。これコピーして持って帰って良い?読みたい」

良い訳ないじゃないですか。冗談でしょう。

「辛い…苦しい…。こうなったらもう…先輩方に土下座するしかない…」

「…土下座したって、一度見たものの記憶は消せねぇよ」
 
仰る通りです。佐乱先輩。

「別に良いじゃないですか。妄想小説なんて、誰しも一度は書いたことがありますって」

「弦木先輩…それはフォローになってませんよ…」

書いたことがあるかどうかじゃなくて、それを誰かに見られたことが問題なんです。

あ、どうしよう。泣きそう。

「小羽根君。これ面白かったよ」

「そうですか…。それはありがとうございます…」
 
褒められても、渇いた微笑みしか出てこない。
 
僕はこの日、心に深い傷を負いました。
 
小説…もう、書くのやめようかな…。