翌日。

僕はその日、珍しく、まったく授業に集中出来なかった。
 
というのも、あの小説ノートが見つからないからである。

見つからないだけならともかく。

あのノートが、誰かの手に渡っていたら。

そのことを思うと、背筋が冷たくなってくる。

あんなもの、加那芽兄様以外の誰かに見られたら…ぶるぶる。

気もそぞろ、とはこのことである。

とてもじゃないけどじっとしていられなくて、昼休みは図書室に駆け込み。

ひたすら本を読むことに没頭して、何とか自分の小説ノートのことは忘れようとした。

しかし。

その頃、僕と同じ理由で、僕以上に神経を参らせている人がいるなんて、思ってもいなかった。




で、迎えた放課後。

「こ、こんにちは…」

戦々恐々としながら、僕は部室の戸を叩いた。

すると。

「元気出せ、萌音ちゃん!」

「萌音さんがこんなに落ち込むとは…。オレンジジュース、買ってきましょうか?」

「大丈夫だ萌音。俺が見つけてやるから」

「…」

今日の部室には、心霊研究部の活動をしている者はおらず。

代わりに、久留衣先輩を囲んで、三人の先輩方が必死に久留衣先輩を慰めていた。

真ん中の久留衣先輩は、しょぼーんと落ち込み、すっかりしょげてしまっていた。

…これは一体、何事。