オリジナルSF小説を書き始めて、しばらく経った頃。

ある日の放課後、部室に行ってみると。

「あぁ〜、つらたん…」

「…」

天方部長は、半泣きで机に向かってシャーペンを動かしていた。

…あれ?

僕は、きょろきょろと部室内を見渡した。

今日は…怪しいものは何もない。

スクリーンも、プロジェクターも、心霊写真雑誌も。

恐ろしいゾンビゲームのパソコンもない。

なんてことだ…。今日は、もしかして…。

「…怖いことは何もしない日ですか?」

「御名答です。今日はまほろさん、溜まりに溜まった宿題を片付けるのに必死だそうで」

僕が尋ねると、弦木先輩がそう答えた。

やったぁ。とガッツポーズしたくなった。

「どうも彼、ここ最近の宿題、ずーっと放置して…。ホラー映画を観たり、ホラーゲームに勤しんでたりしたそうです」

「いい加減宿題提出しないと単位出せねーぞ、って担任に脅されてな。ようやく尻に火がついたらしい」

弦木先輩と、佐乱先輩が言った。

そうなんですか。めちゃくちゃダサいですね。

でも、助かりました。

「いつもなら、怠惰な天方部長に心底呆れるところですが…。今日ばかりは、お陰で助かりました」

「ちょっと、後輩君?地味に失礼なこと言ってない?」

それは気の所為です。

「ちくしょー!終わんねぇ〜!やめてぇ〜!」

などとぶつくさ文句を言いつつも、凄い勢いで手を動かしていた。

さすがに、単位を落として留年は洒落になりませんもんね。

頑張ってください。

「じゃあ、今日は珍しく息抜きの日ですね…」

心霊研究部になってからというもの、毎日のように、今日はどんな恐ろしいことが待っているのかと震えてましたから。

こういう息抜きの日があるのは、とても有り難い。

他の先輩達も、机の上に教科書や参考書を広げて、各々勉強や宿題に勤しんでいた。

まぁ、久留衣先輩だけは…ノートの隅っこに、何やら絵を描いていた。

「李優、見てー。へのへのもへじ」

「萌音、遊ぶな。真面目に宿題をやれ」

…怒られてますけど。

で、僕は何をしようか。

提出すべき課題は全部提出したし。今は、明日の予習も特に必要ないし…。

あ、そうだ。じゃあ、この間にSF小説のネタでも考えようかな。

僕は、先輩達に並んで座り。

こっそりと、机の上に小説のノートを取り出した。

第一の惑星編は終わったから、次は第二の惑星編で、そこで人の言葉を話す生き物を見つけて…。

なんて考えては、小説のネタを書いていると。

「李優の教科書に落書き〜」

「あ、こら。勝手に何やってんだ」

久留衣先輩が、佐乱先輩の目が離れた瞬間に、佐乱先輩の教科書にへのへのもへじを落書きしてきた。