で、それ以降も。

たまに思いついては、暇潰しがてらに小説を書いている。

ファンタジーだったり、SFだったり…甘酸っぱい恋愛モノ…は苦手だから、あまり書かないけど。

それから、ホラー小説なんかも書いたことないな…。

けど、それ以外のジャンルなら、大体何でもござれ。

これはあくまで趣味の小説だから、相変わらず、人様に読ませる為のものではない。

それなのに加那芽兄様は、僕が何か書く度に、見せて欲しい読ませて欲しいとせがんでくる。

恥ずかしいから嫌なんだけど、あんまり断ると、加那芽兄様が物凄く悲しそうな顔するから。

そうすると、何だか…断った僕の心が狭いみたいな感じになって。

申し訳無さのあまり断れず、何だかんだ読ませてしまっている。

その度に、まるで名著にでも出会ったかのように大喜びする加那芽兄様である。

「最近、あんまり読ませてもらってないからね」

「そ、そうですね…」

「高校に入ってからはめっきりだったかな…。最近は何か書いてるの?」

そ、それは…。

絵を描いたりはしてたけど…小説の方は、そういえばあんまり進んでなかったな。

「いえ…最近はあんまり…」

「そうか…。残念だな。私は小羽根の小説を読むのが楽しみなのに…」

そ…そんな露骨に残念そうな顔しないでくださいよ。

別に僕は悪くないはずなのに、何だか罪悪感に駆られる。

「…もう書かないの?」

「え、えぇと…」

…たくさん、お土産をもらってしまった手前。

「恥ずかしいから、加那芽兄様の為に小説なんか書きません」とも言えず。

「わ、分かりました…。また何か考えて…書いたら、お見せします」

僕がそう言うと、加那芽兄様は嬉しそうに微笑んだ。

「本当かい?それは楽しみだ。帰ってきて良かった」

「そ、そうですか…」

「じゃ、くれぐれも宜しくね。あぁ、焦らなくて良いからね。今度はどんなストーリーなのか…楽しみだなぁ」

「…」

…さりげなく、ハードルを高く上げないでもらえませんか。

あぁ…加那芽兄様の帰宅を深夜まで待っていたばかりに。

とんでもない難題を押し付けられたような気分である。