「良いかい、小羽根。文字というのは、文章というのはね、人に読ませる為にあるんだよ。それが面白いか面白くないかは関係ない」

「…」

「どんな文章であれ、ただ一人でも、読んだ人が感銘を受けたなら、それは価値のある文章なんだよ。つまり小羽根の小説は私にとって価値のある、」

「…全然フォローになってませんから」 

「君の中二病ノート面白いね」って言われて、喜ぶ人がいると思いますか。

ただただ恥ずかしいだけです。

「いや、本当に面白いと思うけどね」

それは身内贔屓です。

「これからどうなるのか、是非とも知りたいね。小羽根、この続きは?」
 
「あ、ありませんよ…。加那芽兄様に…読まれちゃったから…もう書きません」

「えっ、書かないの?」

何でそんなに驚くんですか。

「それは勿体ないよ。面白いんだから続きを連載しておくれ」

「れ、連載って…」
 
「クッキー王国の後は、何処の国に行くの?やっぱり、前章から匂わせてたカップケーキ帝国?」

「…仲間の一人が拉致されて、それを取り戻す為にクレープ共和国に…」

「なんてことだ。予想の付かない急展開。やっぱり読みたい」

やめてくださいよ。もう。

余計に恥ずかしさが増すけれど、加那芽兄様はすっかり乗り気。

「果たして主人公一行は、追い求める幻のお菓子、『ジュエル・キャンディ』を手に入れることが出来るのか…。これからの展開が楽しみだよ」

「…」

何で、読むの前提みたいになってるんですか。

恥ずかしくて死にそうだけど、でも。

例えお世辞だとしても、自分の書いた小説を「面白い」と言われて、嬉しくない作者はいない。

加那芽兄様に良いようにおだてられ。

結局、この当時書いていた摩訶不思議お菓子ファンタジーは、無事完結まで書き上げたのだった。