…再会のハグはさておき。

「丁度良かった。明日渡そうかと思ってたんだけど…。小羽根の喜ぶ顔が今すぐ見たいから、今渡すよ」

「はい?」

「小羽根にお土産。たくさん買ってきたんだよ」

とのこと。

「ありがとうございます、加那芽兄様…」

「良いんだよ。小羽根の為にお土産を選ぶ時が、出張の唯一の楽しみだからね」

と、笑顔の加那芽兄様。

…もっと他の楽しみはないんですか。現地の美味しい食事とか。お酒とか。

加那芽兄様はいつも、国内国外に限らず。

出張に行く度に、必ず僕にお土産を買ってきてくれる。

海外旅行だと、余計にたくさん。

お陰で僕の部屋には、古今東西、様々な国のお土産が飾られている。

それらのお土産を眺めているだけで、何だか世界一周旅行してる気分になる。

「はい、まずはこれ」

「ありがとうございます…。…これは何ですか?」

「紅茶のクッキーと、チョコレートだよ」

紙袋の中には、現地の高級お菓子店のクッキーとチョコレートの詰め合わせが。

うわぁ、美味しそう。そしてお高そう。

「それに、向こうで人気の紅茶も買ってきたんだ。小羽根と一緒に飲もうと思ってね」

こちらも、お高そうな紅茶の缶が。

加那芽兄様は、紅茶にはこだわる人だから。

「ありがとうございます…。一緒に飲むのが楽しみですね」

「そうだろう?それから…こっちも小羽根に」

加那芽兄様は、ずっしりと重い紙袋を手渡してくれた。

うわぁ。重たい。

「これは…何ですか?本…?」

「そう、本。現地の古書店を巡って、良さそうな本を買ってきたんだ」

現地の本屋さん…?ってことは。

恐る恐る、紙袋の中の一冊を手に取って、見ると。

やっぱり。向こうの国の言葉で書かれた本。

外国語の本ですよ。

「う、うぅ…。嬉しいですけど…かなりハードルが高い…ような」

加那芽兄様なら、苦労なくすらすら読めるでしょうけど。

僕にはちょっと…。

「そうかな?今の小羽根なら充分読めると思うよ」

「そ、それは買い被りですよ」

「そんなことないよ。もし読めないところがあったら私に聞くと良い。一緒に読んであげるから」

ありがとうございます。

それじゃ…頑張って読んでみようかな。

難しい本は多いけれど、加那芽兄様が勧めてくれる本って、いつも、どれも面白いのだ。

加那芽兄様、僕の本の好みをよく分かってらっしゃる。

「加那芽兄様は?何か読みたい本、買ってきたんですか?」

「私?いや…。私は、特にないかな。詠みたい本は、もう大体全部読んだからね」

さすが加那芽兄様。

「あ、でも…読みたいもの、一つ思いついた」

え?

「そうなんですか?どんな本ですか?」

「小羽根が書いた本かな」

「…」

…唐突に、僕の黒歴史を呼び起こすのはやめてください。