「それ、俺も思いました」

弦木先輩まで。

「引っ越し祝いにしても、わざわざ空っぽの部屋でカメラを出して、写真なんか撮りますかね?」

…言われてみれば…。

写真なんか撮ってないで、早く荷物片付けたらどうですか?

「それに、押入れのアングルもわざとらしいしな。わざと写真の隅っこにチラッと写るように」

佐乱先輩もそう言った。

「案外、わざと心霊写真っぽく見せようとして、マネキンの手を押入れから覗かせたんじゃないのか」

心霊写真捏造説、浮上。

そうそう、そうですよ。 

これはきっと作り物。そうに違いない。

「ぬっ…。君達、つまんないことを言うな…」

「嘘臭いから嘘臭いって言ったまでだろ」

「それじゃ、これはどう説明するんだ?」

天方部長は、また雑誌の別のページを開いた。

見たくないけど見えちゃいましたよ。

しかも今度の写真は、「何処に幽霊が写ってるんですか」なんて聞く必要はなかった。

あまりにも、はっきりと写っていたからだ。

写真に、シャボン玉みたいな丸い、白いモヤが。いっぱい。

「…??シャボン玉しながら撮ってるの?」

ほら。久留衣先輩も僕と同じ意見を。

恐らくカップルの写真なのだろう、仲良さそうに寄り添った男女の顔や、身体に。

無数の白い丸いモヤがかかっている。気泡みたい。

これって…。

「シャボン玉じゃないですよ。これ…俗に言う、オーブですね」

オーブだって。何だか強そう。

「お、オーブって何なんですか。弦木先輩…」

「見ての通りですよ。心霊写真に映り込むオーブは、人魂だって言われています」

ひぇっ。人魂。

こ、この丸いモヤ、一つ一つが一人一人の人魂なんですか?

「な?怖いだろ?」

だから、何で天方部長はドヤ顔なんですか。

別にあなたが撮った写真じゃないでしょうが。

「偶然、カメラに周囲の埃が写っただけじゃねぇの?」

しれー、っとつまらなさそうな佐乱先輩。

そうであって欲しい。心から。

「なら、これを見ても同じことが言えるか?」

と、天方部長はもう1ページ雑誌を捲った。

「ひぇっ…」

思わず、背筋がぞっとした。

そのページに載っているのも、オーブが映り込んだ写真。

しかも、今度は白じゃなくて、赤いオーブが無数に。

何だか燃えてるみたい。恐ろしい。

白が赤になっただけでこんなに怖く感じるなんて。

「こ…これもオーブなんですか…?」

「そうだよ。特に赤いオーブは危険なんだって」

そりゃ、色からして危険そうな香りがプンプン漂ってますからね。

「そ、それじゃ…この写真に写ってる人は…もう…」

「…今頃、この世の人じゃなくなってるかもな」

ひぇっ。な、なんて恐ろしいことを…。

やっぱり僕、もう一生写真撮れませんよ。