い…言われてみれば。本当に。

苦しそうな顔をした女性の顔が、うっすらと写っている…。

…ように見える。

「あぁ、やっぱりそれなのか…。そうだと思った」

「確かに、顔っぽく見えますよね」

佐乱先輩と弦木先輩は、非常に淡々とした答え。

何でそんなに冷静なんですか。

だって、これが本当に女性の幽霊だとしたら…。

「こ、これ…し、心霊写真…ですか?」

「御名答」

と言って、天方部長はテーブルの上に広げていた雑誌のタイトルを、僕に見えるように掲げた。

『世にも恐ろしい心霊写真名鑑100選』というタイトルである。

なんて本を出版してるんだ。

こんな不健全極まりない本は、白ポストに投函しよう。

「な…何でそんな本を持ってるんですか…」

「良いだろ?これ。本屋で見つけてさー。一目惚れして買っちゃったんだわ。定価4000円」

結構なお値段ですね。

天方部長の私物なんですか…これ…。

売る方も売る方ですが、買う方も買う方。

「その名の通り、よりすぐりの心霊写真が100枚載ってるんだぜ」

「…うわぁ…」

ドン引き。

やめましょうよ、こんなの見るの。夢に出てくるじゃないですか。

ようやく、『オシイレノタタリ』の恐怖が少しずつ薄れてきたところだったのに。

またしても、新しいトラウマが植えつけられようとしている。

「これ、顔なの?窓の模様じゃないの?」

久留衣先輩だけは、心霊写真の幽霊を顔と認識出来ていないらしく。

きょとんと首を傾げたまま、写真を凝視していた。

い、いや…まぁ…。

そう見えなくもない、かもしれませんけど…。

「おっ、萌音ちゃん信じてないな?それじゃあこっちはどうだ?」

と言って、天方部長は心霊写真雑誌の別のページを開いた。

するとそこには、また別の写真が。

心霊写真雑誌ってことは…この写真も、心霊写真なんですよね?

「…これは…。…あー、アレか…」

「うん、多分アレですね」

佐乱先輩と弦木先輩は、またしても、すぐさま気づいたようだ。

二人共早くないですか。

一方、久留衣先輩は。

「…?普通の写真じゃないの?」

相変わらず、ちょっと鈍いようだ。

…で、僕はと言うと…。

「…これ、僕も見なきゃいけませんか?」

出来れば見たくないので、必死に視線を逸らしてるんですが。

「当たり前だろ、後輩君。君だって、我らが心霊研究部の一員なんだぞ」

「…部活、勝手に変えられたんですけどね…」

最初から心霊研究部だと知ってたら、そんな恐ろしい部活には入りませんよ。

ついこの間まで芸術研究部だったのに、気づいたら心霊現象を研究する部活になってたんです。

詐欺ですよ、これはもう。