「それで…?今日は何をしてるんですか」

「これこれ、これだよ」

と言って、天方部長はテーブルの上を指差した。

何やってるんだろうと思ったら、先輩達は皆、テーブルに群がって何かを見つめている。

…??

僕も傍に近寄って行ってみると、テーブルの中央に雑誌のようなものが置かれていた。

どうやら、皆で雑誌を読んでいるらしい。

…何でまた…?

「これが面白いんだよ。ほらほら見て」

「面白いって…。…そもそも、学校に雑誌を持ってくるのは校則違反じゃないですか」

「そんなお固いこと言わないでさ。部活動なんだから良いんだって」

まったく…適当なんですから。

後でバレて、生活指導担任に怒られても知りませんからね。

僕は、天方部長に勧められるままに、雑誌に視線を落とした。

大きな写真が掲載されている。

多分、旅行先のホテル?旅館?で撮ったらしい写真。

三人組の女性が、カメラに向かって笑顔でピースサインをしている。

…?この写真が何か?

「…何なんですか?これ…」

「何か気づくことはないか?」

…気づくこと…?

「別に…何の変哲もない、ただの写真じゃ…」

「本当にそうか?よく見てみろって」

「…??顔に、モザイクがかかってます」

普通の写真と違うのは、その点だけだ。

多分プライバシー保護の為だろう。三人共、いずれも両目にモザイクがかけられていて、表情がよく見えない。

しかし、天方部長が言いたいのはそういうことではなかった。

「もっとよく見るんだ」

「…??先輩方、分かります?」

僕は、佐乱先輩達に尋ねた。

彼らは分かってるんだろうか。

すると、佐乱先輩と弦木先輩は。

「あぁ…多分アレだろうな」

「そうですね…。アレでしょうね」

あ、アレ…?って、何?

僕が首を傾げていると、同じく久留衣先輩もきょとんとしていて、

「…?このお姉さん、羊さんのTシャツ着てる」

と、真ん中の女性が着ているTシャツの模様を指差した。

いや、まぁ、そうですけど。

でも多分、先輩方が言いたいのはそういうことじゃない。

「もー…。もっとよく見るんだ、後輩君。萌音ちゃんも。ヒントは、お姉さん達の背後の窓」

「…背後の…窓…?」

「ほら、ここに…白い顔みたいなものが写ってるだろ?」

そう言って、天方部長は写真の背景、旅館の窓の外を指差した。

思わず、「ひぇっ」って声が出そうになった。