…ともあれ。

先輩方に慰められて、涙は引きました。

…はー…。

「可愛いところあるじゃないか、後輩君」

「小羽根さんはもっとリアリストだと思ってましたよ」

「…もう良いでしょ、からかわないでください…」

僕も、もっと加那芽兄様みたいにリアリストだったら良かったんですけどね。

実を言うと、心霊系は非常に苦手である。

幼い頃、そうと知らずに「学校の怪談」的な本を読んでしまって。

思わず泣き出して、加那芽兄様に慰められながら。

その日の夜は、半べそかいて、加那芽兄様のベッドに潜り込んで一緒に眠った。

という、思い出すだけでも恥ずかしい黒歴史がある。

え?今は大丈夫なのかって?

…さすがに今は大丈夫ですよ。僕だって一応…今はもう高校生なんですからね。

…まぁ、さっき、怖過ぎて泣いちゃいましたけど。

あれは…その…ノーカンってことでお願いします。

「そ、それより…一体何だったんですか?」

何とか話題を変えようと、僕はこの三日間、ずっと聞きたかったことを尋ねた。

僕は最初、てっきり、芸術研究部の活動の一環として。

わざわざ三日間も視聴覚ルームからプロジェクターとスクリーンを借りてきて、映画鑑賞を行ったんだと思ってたけど。

どう前向きに解釈しても、あのホラー映画は芸術とはかけ離れてますよ。

「どうって、何が?」

「と…惚けないでくださいよ。あのホラー映画鑑賞が、芸術研究部の活動の一環だとでも言うつもりですか?」

さすがに、それは無理がありますよ。

もしかして…もしかして、だけど。

僕の知らない間に、この部活はまた…。

「おぉ、そうだったそうだった。まだ名称変更届け、出してないんだった」

は?

「後輩君、部活の名前、何にする?」

「な…何で僕に聞くんですか?」

「え?だって、次の部活の命名権、後輩君にあげるって約束しただろ」

『frontier』のチケットの御礼ですか?

「あれはもう良いですよ…」

「そう?そんじゃ何にしよっかなー…。シンプルに、『ホラー映画大好き同好会』とかにする?」

何それ。ド直球。

や、やっぱり…いつの間にか、また部活動の内容が変わってる。

「芸術研究部は何処に消えたんですか…?」

「え?もう芸術にも飽きた頃かなーと思って」

あなたが飽きただけでしょ。僕は飽きてないですよ。

まだまだ芸術を追い求めたいです。

「次何部にしよっかなーって考えてたら、丁度yourtubuでホラー映画配信やっててさー。お、これにしようって」

そんな…。晩御飯のメニューこれにしよう、みたいなノリで…。

その天方部長の悪ノリで、僕はこの三日、ホラー映画に泣かされたんですか…?