「でも、やっと顔が見れました。さては、泣いてましたね?」

「ぎくっ…!」

こ…この戦法は。

加那芽兄様が、稀によく使う…。

そして僕はどうして、毎回こんな分かりやすい「あっ!UFO!」に引っかかってしまうのか。

自分で自分が情けない。

…ちなみに。

「何処?何処?UFO何処?」

久留衣先輩も綺麗に引っ掛かって、窓の外をきょろきょろしていた。

「…あのな、萌音。UFOは嘘だ」

「えっ。いないの?」

「いないよ…」

佐乱先輩に呆れられていた。

が、僕に人のことを呆れている余裕はない。

…べそかいてる顔、見られた。

「なーんだ、後輩君。そんなに怖かったの?」

にや〜、とする天方部長。

こ、の…。

「こ…怖くなんかないですっ…」

「ふーん、そうなんだ?実はこの映画、第四弾もあるんだけど。怖くないってことなら明日はそれを観、」

「済みません怖いです。これ以上は許してください」

あまりにもあっさり、敗北宣言。

情けないことこの上ないが、これ以上はもう無理。

絶対泣く。と言うか、もう既に泣いてる。

「後輩君、素直な良い子だなぁ」

加那芽兄様にもよく言われます。

「まほろ、お前人が悪いぞ。第四弾なんてないだろうが」

ジロッ、と天方部長を睨む佐乱先輩。

えっ?

そ、そういえば…続編はあるし続編の続編もあるけど。

続編の続編の続編がある、つまり第四弾があるとは言ってなかった。

「ごめんごめん。嘘だよ。このシリーズは第三弾で終わり」

「な…!だ、騙したんですかっ?」

「いやー。後輩君がピュアで可愛いもんだから…」

「…」

そんな…人の悪い嘘をつくなんて。

「…加那芽兄様に頼んで、闇討ちしてもらおうかな…」

「ちょ、後輩君が恐ろしいこと言ってる!冗談、冗談だって!」

冗談でも、言って良いことと悪いことってものがあるんですよ。

闇討ちは勘弁してあげます。

「よしよし。泣かなくて良いんだよー。よしよし」

久留衣先輩が、子供にするように頭を撫でてきた。

ちょ、やめてください。佐乱先輩が見てるんですよ。

「な、泣いてないですよ…。もう…」

部室も明るくなったし、もう涙が引きました。

「災難だったな。大丈夫だ、あれはフィクションなんだから」

佐乱先輩にも慰められた。

あぁ、もう情けない。別の意味で涙が出そう。

「そうそう。萌音のジュース、干し柿メロンソーダあげるから、元気出して」

「あ、ありがとうございま…。…え?」

気持ちは有り難いですけど。

干し柿メロンソーダは遠慮しておきます。