同じことの繰り返しになるので、詳しくは語りません。

が、僕にとってこの時間が地獄であったことは、言うまでもない。

何とか、泣きそうになるのを堪えるだけで精一杯。

しかも恐ろしいことに、この映画には、続編の続編がある。

その翌日の放課後に、『オシイレノタタリ3』を見せられた。

続編の続編こそは怖くないかと思いきや、全然そんなことはなく。

今ここに加那芽兄様がいたら、間違いなく顔を胸に埋めて泣いていたと思う。






…で、その『オシイレノタタリ3』を視聴後。

「いや〜面白かったー!やっぱり全部通して観ると最高だな!」

天方部長、超ご満悦。

「まぁ怖さレベルで言うと、そこそこってところですかね」

「日常に潜む怪異、ってところがキモだな」

「押入れ面白いね。帰ったら萌音も押入れに入ってみよう」

天方部長以外の三人の先輩達の反応は、この通りである。

久留衣先輩、よくあの映画を観て、押入れに入ってみようなんて思えますね。

僕は無理ですよ。

多分、向こう20年は、押入れを開ける度にこの映画を思い出しそう。

すると、その時。

「…ん?どうした後輩君」

「…」

ようやく電気をつけてくれた天方部長が、後ろを向いてハンカチで顔を押さえている僕に気づいた。

…気づいてしまいましたか。出来れば気づかないでいて欲しかったですね。

そしてそっとしておいてください。

「何だ。顔になんかついてんのか?」

「…違います」

そうじゃありません。

「ポップコーン、喉に詰まったの?」

「…違います」

「萌音の買ってきたジュースが不味過ぎたか?」

「…それは不味いですけど、でも違います」

ちなみに、今日は梅干しバナナソーダというジュースを渡されました。

梅干しなのかバナナなのか、どっちつかずの謎のハーモニーを奏でる飲み物でした。

こういうジュースばかりを買ってくる久留衣先輩も久留衣先輩だけど、販売するジュース会社もどうかしてると思います。

「…もしかして、小羽根さん。怖かったんですか?」

弦木先輩の問いかけに、思わずびくっ、としてしまった。

そ…そんな、ことは。

「押し入れから出てくるバケモノ。怖かったですか」

「ち…ち…違います。そ、そんなことは」

「…小羽根さん」

はい?

ハンカチで顔を押さえたまま振り向くと。

突然、弦木先輩は焦ったような声で、窓の外を指差し。

「あ、あそこ、UFO!」

と、聞いた。

思わず僕はびくーっ!として、弦木先輩の指差す方を向いた。

「な、な、な、何ですか!?UFO!?」

「…いや、何も居ませんけど」

…えっ。