び、びっくりした…。そんな大声出さないでくださいよ。

そ、それより…。

「な…何やってるんですか…?」

暗闇の中で、満面笑みの天方部長が立っていた。

…若干不気味なんですけど。

すると天方部長は、よくぞ聞いてくれたとばかりにドヤ顔。

あっ、聞かなきゃ良かった…。

「済みません、やっぱり良いです。帰ります」

今日は加那芽兄様も海外出張でいないし、帰って本でも読もう。

と、思ったのに、天方部長にガシッと腕を掴まれた。

しまった。帰れなかった。

「ちょっと待てぃ!何帰ろうとしてんだ」

「だって、これは絶対関わらない方が良いと思って…」

「良いから、良いから。超最高に面白いことやってんだよ。ちょっと来いって」

「ちょ、何なんですか」

ずるずるずると、引き摺られるようにして部室に連れ込まれた。

あぁ、なんてことに。

部室の中では、何やら準備が進められていた。

「はい李優さん。そっち持ってー」

「はいはい…」

「ジュースとポップコーンはここだよー」 

弦木先輩と佐乱先輩が、何やら部室の奥にスクリーンを設置。

スクリーンの前には、パイプ椅子が並べられており。

久留衣先輩が、人数分のペットボトル飲料を用意していた。

…これから何が始まろうとしているんだろう。

多分だけど、芸術研究部の活動でないことは確かだ。

「よーし。準備は良いな?後輩君も揃ったことだし、そろそろ始めるぞー」

その前に、一体何を始めようとしているのか教えてくれませんか。

「あの…佐乱先輩」

この中で一番、良識を弁えていそうな先輩に聞いてみることにした。

「どうした、小羽根」

「今日は一体…何を始めようとしてるんですか?」

「当選の疑問だな。説明してやりたいところだが…実は、俺もよく知らないんだ」

えっ。佐乱先輩も知らないんですか?

「…よく知らないままやってるんですか?」

「仕方ないだろ。俺だって被害者なんだよ。芸術研究部だって言うから、真面目に芸術の勉強をしようと思って、図書館で画集を借りてきたんだが…」

そうなんですか?

どんな画集なんだろう。僕も、加那芽兄様の書斎に置いてあった画集を何冊か見たことがある。

もし佐乱先輩が画集を読むのなら、僕にも見せてもらいたかったなぁ。

「今日部室に来たら、突然まほろが『視聴覚ルームからスクリーンとプロジェクターを借りてきて』って頼んできて…唱と二人で借りに行ったんだよ」

「萌音はねー、ポップコーンとジュース買ってきてって言われたの。購買に行って買ってきたんだー」

とのこと。

先輩方をパシリのように使って…。天方部長は一体、今日は何を企んでいるのだろう。