非常に不覚。

「成程…。…そうだよね…」

私の好きな紅茶は、香りが強くてコクが深い。

つまり、好みを選ぶ味である。

自分は好きだからと思って、気にしてなかったけど。

小羽根の口には合わないかもしれない。

「気づかなくてごめんね…」

「い、いえっ…その…。僕が…飲めないのが悪くて…」

「いや…君は何も悪くない。私が浅はかなのが全ての原因だよ」

「そ、そんな…」

そのせいで小羽根を悲しませてしまった。

何とか挽回したい。

「ごめんね、小羽根。ちょっと待っててくれる?」

「え?は、はい…」

私は、食べかけのチョコレートをしまって席を立った。

急いで自分の部屋に戻って、貰い物の、別のお菓子と。

それからキッチンに行って、使用人に頼んでオレンジジュースをもらってきた。

これで良し。 

それらをお盆に乗せて、再び小羽根のもとに戻った。

「小羽根、お待たせ」

「は、はいっ…」

私の顔を見るなり、緊張した面持ちの小羽根。

うーん…。その緊張を少しでも解く為に、一緒にティータイムを過ごそうと思ったのに。

怖がらせてしまったんじゃ、逆効果じゃないか。

「はい、こっちなら小羽根でも美味しいと思うよ」

と言って、別のお菓子を小羽根に出した。

こっちは、同じく貰い物のクッキーである。

アーモンド味やチョコ味や、イチゴ味など。

私も一枚、二枚食べたんだけど、あとは使用人達に渡そうかと思って部屋に置いておいたのだが。

取っておいて良かった。こんな時役に立つ。

「それと、こっちがオレンジジュース」

口直しにどうぞ。

「あ…ありがとうございます…」

と言って、小羽根はクッキーを手に取って、ぱくり。

今度は、顔をしかめて「ふぇっ」とは言わなかった。

むしろ。

「…!美味しい」 

と、顔を綻ばせた。

守りたい、この笑顔。

思えばこの時、私は小羽根の笑顔にノックアウトされたのかもしれない。

「美味しいかい?」

「はい、とっても…」

それは良かった。

「どんどん食べて良いよ」

どうせ、私はもう食べるつもりなかったんだし。

小羽根は嬉しそうに、クッキーをポリポリ、ジュースをごくごく飲んでいた。

…何だろう。ハムスターが餌を食べているのを眺めてる気分。

…凄く可愛いよね。