これには、私も驚いてぎょっとした。

えっ?

「だ…大丈夫?どうしたの?」

「〜っ」

小羽根は涙を滲ませながら、あわあわと半パニック状態。

ど…どうしたの?本当に。

喉に詰まったとか?

まさか、そのチョコに何か仕込まれてたとか?

なんて突拍子もないことを考えてしまうのだから、私も相当動揺している。

「水…そうだ。えっと、水飲む?」

「ひ…ひゃい…」 

涙を滲ませる小羽根が、こくりと頷いた。
 
コップにミネラルウォーターを入れて渡すと、小羽根はごくごくと一気に飲み干した。

「はぁ…はぁ…」

「…大丈夫?」

「は、はい…」

小羽根は、ごしごしと両目を擦った。

…何だろう。

これ…完全に、私が泣かせたみたいになってるよね。

いや…私が泣かせたんだけど…。

「…その…ご、ごめんね…?」

ともかく謝罪である。

私が何をしてしまったのか分からないけど、私が泣かせてしまったのは確かなので。

こういう時は、何をおいてもまず謝罪。

しかし、小羽根の方も悪いのは自分だと思い込んでいるようで。

「ち、違うんです…。その、僕が悪くて…ごめんなさい…」

「いや…小羽根は悪くないでしょ」

「えっと、あの…えっと…。…ごめんなさい」

「…」

蚊の鳴くような声で、ごめんなさいを繰り返す小羽根。

…この子の、この癖は早急に治したほうが良いね。
 
「小羽根、君は何も悪くない。だから落ち着いて、何があったのか話してくれるかな」

「…え…と…」

「今、何で泣いてたの?」

「…それは…」

困った顔の小羽根は。

可哀想に、ぐるぐる視線を彷徨わせ、まるで捨てられた子供のよう。

…私、責めてるみたいに見えるかもしれないけど、決して責めてるつもりじゃないんだよ。

「その…この、チョコが」

…チョコ?

原因、チョコなの?
 
「苦くて…びっくりして…」

「…そうなの?」

「ふぇっ…。ご、ごめんなさい…」

いや、謝る必要はないんだけど…。

このチョコ、そんなに苦いの?

そういえばさっきから、小羽根、チョコを食べる度に「ふぇっ」って…。

あれはそういうことだったんだろうか。