最初に会った時の小羽根は、今よりずっと小さくて。

びくびくと怯えていて、常にこちらの顔色を伺っていて…それは、見ていて痛々しくなるほどだった。

母親が亡くなってからというもの、小羽根は親戚をたらい回しにされていた。

酷いことをする大人がいるものだ。

その大人が自分の親戚だと思うと、おぞましくて吐き気がする。

私と最初に会った時、小羽根は私を怖がっていた。

あの時私は、今の小羽根と大して歳が違わない子供だったものだが。

それでも、幼い小羽根にとって当時の私は、大人と同じくらい怖い存在だったのだろう。

おまけに、私は無悪家の跡取り。

自分ではあまり言いたくないが、良いところのお坊ちゃんという立場。

小羽根にとっては、雲の上の存在にも等しかったのだろう。

私は出来るだけ優しく、努めて明るく話しかけたつもりだったが。

あの時の小羽根は、怖がるばかり、怯えるばかりで、ちっとも喋らなかった。動かなかった。

あの歳の子供は、落ち着きなくはしゃぎ回っているのが似つかわしいというのに。

借りてきた猫のように、押し黙って微動だにしなかった。

見ているだけで痛々しく、一体どんな目に遭ったら、小さな子供がこんな風に萎縮するのだろうと思った。

私が話しかけても、ろくに、まともに返事も出来ない有り様だった。

まるで、怯える小鳥のようだった。

だからだろうか。

私は、そんな小羽根を放っておくことが出来なかった。

母親も周囲の人間も、私が小羽根を構おうとする度に、「放っておけ」と言った。

弟と言っても腹違い。挙げ句妾の子なんて、私が気にかけるような存在じゃないのだそうだ。

だが、そんなこと私にはどうでも良い。

例え母親が違っていようと、私にとって弟である事実に変わりはない。

だから私は、怯える小さな小羽根に、愛情をたっぷりと注いでやった。

話しかけ、一緒に遊び、同じ時間をたくさん一緒に過ごした。

最初の頃、小羽根は私の愛情表現に戸惑うばかりだった。

今でも昨日のことのように、小羽根の怯えた瞳を思い出す。