ちょ…ちょっと、意味が分からないんですけど。

天方先輩、突然何を言い出すんだ。

きっと、これには他の先輩達も困惑しているに違いない、と思ったが。

「上手いこと勧誘出来て良かったですね」

「うん。新入部員は絶望的かもしれないって、李優とも話してたんだ」

二人共、何やら安堵したようにそう話している。

駄目だ。僕の味方になってくれなさそう。

さっきの先輩…。佐乱先輩が戻ってこないだろうか。

あの人は話が通じそうだし、あの人なら、何がどうなってるのか僕に説明してくれるかもしれない。

すると。

「戻ったぞ」

噂をすれば何とやら、佐乱先輩が戻ってきた。

よ、良かった。

「お、李優君お帰り。提出してきてくれた?」

「あぁ。行ってきたよ」

「さんきゅー」

…そんなことより。

「さ…佐乱先輩。助けてください…」

「は?何から?」

…何からだろう?

僕にも分からないや。

「その…何故か僕、勝手にこの部活動に入部させられそうになってて…」

僕、入りますなんて一言も言ってない。

ただ、廊下を歩いていたら突然拉致されて、連れてこられただけで…。

しかし。

「…は?入部させられそうってどういうことだ?」

佐乱先輩は、不思議そうに頭を捻った。

「え?いや…言葉通りの意味ですけど…」

「入部させられそう…も何も、ついさっき入部届、提出しただろ?」

!?

「部活動委員会に持っていったから、お前はもう、立派な部員の一人だぞ」

ちょっ…。

…え?は?

あまりに意味が分からなくて、頭が真っ白。

…入部届なんて、僕、書いた覚えないんですけど…?

「…ど、どういうことなんですか…?いつの間に…?」

我ながら裏返った声で、恐る恐る、天方先輩に尋ねた。

すると。

「え?さっき名前の綴り聞いたじゃん。あの時」

あっ、あの時か!

「すんなり綴りを教えてくれたから、了解したもんだとばかり…」

「ち、ちがっ…」

て、てっきり興味本位で聞いたものとばかり。

あの時既に、(無断で)入部届に名前を記入していたなんて。

詐欺に遭ったような気分だった。

「ぼ、僕は…入部するなんて、一言も…」

「まぁ良いじゃん。これも何かの縁ってことで。仲良くしようぜ」

天方先輩。何で勝手に決めてるんですか?

「ようこそ、じゆうけ…。…えっと、今ウチ何部だっけ?」

「料理研究部ですよ。自分で作った部活の名前を忘れないでください」

「おぉ、それだそれ。後輩君。料理研究部にようこそ!」

にこやかに、天方先輩に握手され。

何故か、物凄く勝手に、成り行きで、僕の所属する部活が決まってしまった。