駄目ですか?やっぱり駄目ですよね?

プレゼントの横流しなんて、しかもプレゼントをくれた本人の前で…。

あまりにも失礼ですよね。

「す、済みません。やっぱり、今のは聞かなかったことに…」

「…なんだ、男か…。良いよ」

え?

慌てて取り消そうとしたのに、加那芽兄様はさらりとそう言った。

「女だったら警戒対象だけど、男なら問題無いよ」

「…」

…にこにこ笑いながら、何を言ってるんですか。加那芽兄様。

警戒対象って何ですか。

…それどころか。

「小羽根はなんて優しい良い子なんだ。貴重なプレゼントを、自分より欲しがっている人がいたら、惜しむことなくその人にあげる。まるで、慈愛と博愛の天使のようだ…」

「…加那芽兄様。何血迷ったこと言ってるんですか」

「それは小羽根にあげたものだからね。小羽根が好きにして構わないよ。より欲しがっている人がいるなら、あげると良い」

そうですか。

そう言ってもらえて嬉しいんですけど、何だか釈然としませんね。

「それに、メーカーに言えば他にもサンプルを送ってもらえると思うよ」

最強の身内特権ですね。

そ、そこまでは…さすがに…。他にも欲しがってる『frontier』ファンの方がたくさんいるはずですから。

その人達の手に渡らせてあげてください。

「ありがとうございます、加那芽兄様…」

「良いんだよ、小羽根。君の為に私に出来ることがあるなら、何でもしよう」

それは頼もしいですね。

きっと、天方部長も喜ぶことだろう…。

「…あ」

「?小羽根?」

その時、僕は一つの可能性を思いついた。

どうしよう。これはさすがに、我儘が過ぎるだろうか?

しかし。

「どうしたんだい?小羽根。何でも言いなさい」

加那芽兄様に促され、もう引くに引けない。

…こうなったら覚悟を決めよう。言うだけならタダだ。

「あの、加那芽兄様。もし、出来たら…」

僕は加那芽兄様に、その厚かましいお願いを口にした。