学校に持ってくるだけだったら、天方部長が怒られるだけで済むけど。

それを僕が受け取ってしまったら、僕まで共犯者じゃないですか。

僕は嫌ですよ。天方部長のせいで、先生に怒られるなんて。

「骨身に沁みてないようですね。大事なコレクションなのに、先生に見つかったらこれも没収されますよ」

「なーんだ、そんなこと気にしてたのか?」

そんなこと、って何ですか。

「大丈夫、大丈夫。バレなきゃ良いんだよ。カバンの中に入れて隠蔽すればバレないって」

そういう問題じゃないんですよ。

天方部長…さてはあなた、常習犯ですね?

「漫画とかCDの貸し借りなんて、誰でもやってるって。気にすることないよ」

やっぱり常習犯なんですね。

あなたは気にしなくても、僕は気にしますよ。

僕の素行が悪かったら、僕だけじゃなくて、無悪の家名を汚すことになる。

ひいては、加那芽兄様の評判を落とすことにも繋がりますからね。

だから、咎められて困るようなことはハナからしないつもりで…、

「ほらほら、さっさとカバンの中にしまって。ちゃんと全曲聴いてくれよ!感想、楽しみにしてるからな」

突き返す余裕もなく、強引にカバンの中に押し込まれてしまった。

あぁ…これで、僕まで共犯者に…。

しかも、これを返す時、僕も天方部長と同じことをしなきゃいけないんですよね?

学校にこの紙袋を持ってきて、放課後までカバンの中に隠しておかなきゃいけない。

どうするんですか。その日、抜き打ちで持ち物検査とかあったら。

今のところ、入学して一度もそういうことはなかったけど。

持ってきちゃいけないものをカバンに隠している時。そういう時に限って、あるんですよ。持ち物検査。

あぁ…恐ろしい。

もし万が一見つかったら、天方部長に罪を擦り付けよう。

先輩に脅されて、無理矢理学校にCDを持ってくるよう強要された、って訴えますからね。