「…よし、こうなったら、自分のやることは一つだ」

しばらくテーブルに突っ伏して、うだうだ言ってた天方部長だが。

いきなり、むくっと顔を上げた。

お、元気出ましたか?

「そうですね。気分を変えて別のことを始め、」

「後輩君に、『frontier』を布教する!」

…はい?

…いや、何でそうなるんですか?

目が点になっている僕を、佐乱先輩と弦木先輩は、「あーあ…」みたいな顔で見ていた。

ちょっと。見てるだけですか。助けてくださいよ。

代わりに佐乱先輩が、僕に向かって小さく呟いた。

「藪をつついて蛇を出す、って知ってるか?」

「…知ってますよ…」

皮肉ですか。

僕は別に、天方部長をつついて蛇を出したんじゃありません。

ただ、部長を励ましたくて声をかけたら、思わぬ「蛇」が出てきてしまっただけです。

もしタイムマシンが使えて過去に戻れたなら、その時は部長が落ち込んでようと半泣きだろうと、徹底的に無視します。

しかし残念ながら、そんな都合の良いタイムマシンは存在しなかった。