僕が微妙な顔をしていることにも気づかず。

天方部長は、楽しげにスマホのグッズ画像フォルダを開いた。

「さぁさぁ、見てくれ見てくれ。何年にも渡って掻き集めた、自分のコレクションを」

「は、はぁ…。こっちもたくさんありますね…」

ズラッと並ぶ、画像の山。

凄い数だ…。これ、一つ一つ全部違うグッズなんですよね?

「だろ?まずこれが、これまで『frontier』が出したCDの数々。何枚かはサイン入りなんだぜ」

「へぇ…結構いっぱいあるんですね」

僕が知らなかっただけで、本当に有名なアーティストなんですね。

こんなにたくさんCDを発売してるなんて。

「CDも良いけど、yourtubeで公開してるMVもめっちゃ良いぞ。毎回超気合い入ってて、再生数100万を余裕で越えてんだよ」

熱く語ってくれてありがとうございます。

yourtubeって、有名な動画サイトですよね。僕は全然見ませんけど…。

「で、こっちがグッズ。こっちがライブ限定のTシャツな。これがパーカー。こっちがコラボジャケットでー」

出るわ出るわ。衣類のグッズの数々。

「これ…天方部長の普段着なんですか?」

「まさか。勿体なくて着られないから、全部タンスの肥やし」

勿体なくないですか?それ…。

服は着る為にあるんでしょう?

「次にこれ。『frontier』コラボアクセサリーの数々」

今度は、指輪やネックレス、ブレスレットなどのグッズ。

へぇ、お洒落ですね。

普段遣いでも充分使えそうなデザインだけど…。

「これも…タンスの肥やしなんですか?」

「アクセサリーボックスに突っ込んで、眺めてるだけだ」

やっぱり勿体ないですね。

加那芽兄様もたくさんアクセサリーの数々は持ってますけど、ちゃんと日替わりでつけていらっしゃいますよ。

「そんでお次にー…。これ。『frontier』のライブ限定ピンバッジとー、マフラータオル、こっちがトートバッグでー」

「これらも未使用なんですよね?」

「勿論。で、これが集めに集めた缶バッジとアクスタの数々だ」

缶バッジ…は分かりますけど、あくすたって…?

見たところ、透明で薄いフィギュア…?みたいな感じですけど…。

「これがまた、何時間でも眺めていられるんだよな〜」

ご満悦。

僕は…多分5分も眺めてたら飽きそうですね…。

「あと、自分は使わねぇけど、コスメグッズの数々な。『frontier』はよく、化粧品メーカーとコラボして、マニキュアとかリップとか」

「え、えーっと…天方部長は、こういうグッズを、何処で買うんですか?」

生々しい話、これほどのグッズを集めるとなると…多分、それなりのお金もかかるだろうし…。

このお洒落なアクセサリーとか、いかにも高そうじゃないですか?

「当然、リアルショップで新品購入した…と言いたいところだけど、残念ながらそうじゃないんだよなぁ」

「え?じゃあ何処で…?」

「リアルショップで買ったものもあるけど、ネットショップで中古で揃えたものも多いんだよ。オークションとか、フリマサイトでな」

ネットショップで…こういうものも売ってるんですね。

「いっそライブのチケットも、オークションで買おうかなーと思っ…」

「それは駄目ですよ、まほろさん。転売ヤーを儲けさせるような真似は」

「わ、分かってるよ…」

ギロッ、と天方部長を睨む弦木先輩。

転売ヤーから買うのは駄目ですね。確かに。