事件が起きたのは、その日の四時間目。

今日の四時間目は体育で、その日はグラウンドで陸上競技を行った。

今日は朝から気温が高くて、一足早い夏が来たかのようで。

グラウンドにいると、暑くて汗が滴り落ちた。

暑いと言うか…熱い、ような…。

頭がふらふらするのは、もしかして熱中症だろうか…?

体育が終わる頃には、身体がぽかぽかと熱くなっていた。

その体育の授業の直後だった。

授業で使ったハードルを、体育倉庫に片付けている最中。

暑いなぁ、暑いなぁと思っていたら…突然、眼の前が真っ暗になり。

ふら〜と、その場に倒れるように蹲ってしまった。

「…!?無悪君、大丈夫!?」

近くにいたクラスメイトが、慌てて駆け寄ってきた。

「だ…大丈夫です、ちょっと、目眩、が…」

クラスメイトに心配をかけちゃいけないと、急いで立ち上がったのだが。

それが良くなかった。

突然立ち上がったことによって、貧血を起こしたらしく。

再び頭がくらっとして、足元が覚束なくなり。

今度は蹲るどころか、その場に転倒。

ばたんきゅー、状態。

一度倒れてしまったら、もう立ち上がれなかった。

「さ、さ、無悪君!?」

近くにいたクラスメイトはますます動揺して、騒ぎを聞きつけた他のクラスメイト達も、何事かと駆けつけてきた。

あぁ…何だか大騒ぎになってしまった。

「だ…だいじょう…」

大丈夫ですから、と言って何事もなく立ち上がりたいのに。

身体が全く言うことを聞かず、とてもじゃないけど立ち上がれなかった。

…それどころか。

倒れるなり、強烈な睡魔に襲われ。

段々と意識が遠のいてきた。

「えっ、無悪君…。無悪君、しっかりして!」

クラスメイトに身体を揺すられたが、もう言葉を返すことは出来なかった。

そのまま、僕は意識を失ってしまった。