ハードスケジュールなのは自覚している。

だけど、精々三週間程度だから、多少無理しても大丈夫だとたかを括っていた。

実際、最初の一週間位は、このハードスケジュールでも大丈夫だった。

でも、二週間目に入ってくると…。

段々と、身体がついていかなくなってきた。

睡眠不足のせいで頭がボーッとして、テキストや問題集を前にしても、全然集中出来ない。

そして、集中出来ないせいで、問題を解くペースが遅くなっていく。

問題集はページを進めるに従って、更に難しく、複雑になっていくのに。

お陰で、一日のノルマがなかなか終わらなくて、ダラダラと時間ばかりが過ぎていく。

負のループに陥っている気がする。

「明らかに寝不足でしょう、小羽根さん。一日のノルマにこだわってないで、少しペースを緩めては?」

と、弦木先輩が提案した。

…それは僕も、何度も考えました。

でも、それじゃ意味がないのだ。

今、負けてしまったら…中間試験の時と同じだ。

すぐにそうやって楽な方に、簡単な方に流されてしまうから。

学年4位という、非常に微妙なラインに落ち着く羽目になってしまったのだ。

それじゃあいけない。

「駄目です。自分に出来る全力を尽くしたいんです」

「全力って…。それで身体を壊したら、元も子もないのでは?」

「…大丈夫ですよ…。あと一週間ですし…」

ここまで二週間、毎日頑張ったんだから。

あと一週間、同じように頑張りますよ。

多少無理をしても大丈夫。むしろ、無理をするくらいじゃないと。

…凡人の僕は、そうでもしないと加那芽兄様の足元にも及ばないから。

「自分の限界は、自分でちゃんと分かってます…。だから大丈夫です」

「…」

「さぁ…お喋りしてないで、問題の続きを…」

また集中力が途切れてしまった。1から解き直しですね。

お喋りはここまでとばかりに、僕は再びシャープペンを手に取った。

「…本当に大丈夫か?後輩君…」

「ヤバそうですね」

「こてーん、って倒れちゃわないかな」

「有り得るな…」

そんな僕を遠目に眺めながら、先輩方は順番に呟いていた。

が、既に僕の耳には届いていなかった。

思えば、この時の先輩方の忠告に、素直に耳を傾けておくべきだったのである。