そんな調子で、根を詰めて勉強すること二週間。

いよいよ、模試は来週に迫っていた。

試験勉強もラストスパートとなった今日この頃だが。

連日に渡って、ハードスケジュールで勉強し続けてきた僕の身体に、変化が現れてきていた。





放課後。部室にて。

「…はぁ…」

シャーペンを動かしながら、僕は深々と溜め息を漏らした。

…今日だけで、もう何度目の溜め息か分からない。

しかし、そんな僕を横目に。

「よーし…じゃあここで、スケッチブックに棒人間を描きまくる唱君を…パシャッ」

…調理実習室に、スマホのカメラのシャッターを押す音が鳴り響く。

「被写体の許可を得てから撮影してもらえますかね。俺は有料ですよ」

「良いじゃんちょっとくらい。はい次。萌音ちゃーん、こっち向いてー」

「はーい」

「おっ、良いね〜。パシャッ」

スマホカメラに向かってピースサインをする久留衣先輩を、激写。

「良いよ良いよー、萌音ちゃん。じゃあポーズ変えてみよっかー」

「はーい」

すちゃっ、と敬礼した久留衣先輩を激写。

「おっ、良いねぇ〜。次、うさ耳やってみてー」

「はーい」

両手を頭の上に乗せて、さながらうさぎのようなポーズを取った久留衣先輩を、激写。

「うーん可愛い!じゃあ次は両手でハートを作って…」

「はーい」

「おい、ちょっと待て」

モデルみたいに次々とポーズを取る久留衣先輩と、その久留衣先輩をスマホカメラで撮りまくる天方部長を。

佐乱先輩が、間に入って止めた。

「お前ら、何やってんださっきから」

「え?写真撮ってるだけじゃん」

「萌音はモデルじゃないんだぞ。勝手に撮るな」

「良いじゃん可愛いんだし。あ、そうか。自分の彼女を勝手に撮るな!ってこと?いやぁ仲良しだねー」

「…殴るぞ、お前」

佐乱先輩は、こめかみにピキピキと血管を浮き立たせていた。

自分の恋人が、部長とはいえ、違う男に次々と写真を撮られては。

彼氏として、佐乱先輩も黙っていられないらしい。当たり前。

「今すぐ、その写真のデータを消せ」

「分かった分かった。李優君のスマホに送っとくから。萌音ちゃんの可愛い写真を、自分だけで独占はしな、」

…ブチッ。

キレた佐乱先輩の鉄拳が、天方部長の脳天に炸裂した。

…あーあ…。

僕は見なかったことにして、勉強の続きに励んだ。