「それは…その…」

話せば…長くなりますけど。

「先日の…試験の結果が返却されたので、試験で間違えたところを…加那芽兄様に教えてもらおうと思って…」

「…試験ですって?」

奥様は、胡散臭そうな目で僕を見つめた。

「は、はい…」

「…あらそう、情けないこと。私の加那芽が学生時代の頃は、誰に教わらなくとも常に誰よりも優秀な成績でしたけど」

「っ…」

それを…言われると、僕には何も言い返す言葉がなかった。

「学のない平民女の息子じゃ、そうは行きませんよね。…無悪家の恥晒し。面汚しだわ」

「…」

吐き捨てるように言われ、僕は無言で俯いた。

…その通りだ。僕と同じ歳の頃、加那芽兄様の成し遂げた偉業の数々を思えば…。

僕は、その足元にも及ばない。加那芽兄様と…無悪家の面汚し。

「良いこと?あなたの一挙一動が、私と加那芽の名誉に関わるのだということを忘れないようにしなさい。あなたのことなどどうなってくれても構わないけれど、無悪の家名に泥を塗る真似は許しませんよ」

「…はい、奥様…。肝に、銘じます…」

「…ふん。いつ出て行ってくれても構わないんですよ。…汚らわしい」

それだけ言うと、これ以上話したくないとばかりに、奥様はくるりと踵を返して立ち去った。

「…」

…何だろう。

昼間、掲示板で自分の順位を見た時よりも、遥かに情けなくて惨めで…。

先輩達の慰めの言葉も、今の僕には全く響かなかった。