「よーし!試験の結果も発表されたことだし、今日も元気に部活をはじっ、って、うぉっ!?」

「…」

何やら吹っ切れた笑顔で、意気揚々と調理実習室にやって来た天方部長は。

部室の椅子に座って、ずーん、と沈み込んだ僕の姿を見つけて、思わずビクッとしていた。

…済みませんね。驚かせて。

「こ、後輩君が日陰のキノコみたいになってるぞ…。どうしたんだ?」

「連日に及ぶ部長のパワハラに耐えかねて、とうとう精神を病んだのでは?」

「えっ、マジ?なんかごめん」

凄く軽い調子で謝られた。

でも違います。弦木先輩、適当なこと言わないでください。

「落ち込んでるの?よしよし、可哀想に。大丈夫だよ、多少落ち込むことがあっても、明日になったら太陽はまた昇るよ」

落ち込んでいる僕に、久留衣先輩が何やら壮大な励ましの言葉を送ってくれた。

気持ちは嬉しいけど、抽象的過ぎてあんまり励ましになってない。

「甘いもの食べると元気出るよ。萌音なんてね、うっかり学生鞄を川に落っことした時ショックだったけど、李優の作ってくれたケーキ食べたら、元気になったもん」

「…そんなことがあったんですか?佐乱先輩…」

「…あったよ。今でも覚えてる。『川に鞄落っことしちゃったー。ケーキ作ってー』ってせがまれて、俺は空いた口が塞がらなかった」

そうでしょうね。

どうやったら、通学中に鞄を川に落とすんですか?

仮にそんなことが起きたとしたら、僕はケーキくらいじゃ元気にはならないと思います。

それでも久留衣先輩の為にケーキを作ってあげた、佐乱先輩の優しさよ。

「…で、真面目な話何に落ち込んでるんですか?今日試験の結果が発表されましたし、もしかしてそれですか」

「うっ…」

「…あ、いきなり図星ついちゃって済みません」

い…良いんですよ、弦木先輩。

言い逃れの出来ない真実ですから。

すると、それを聞いた天方部長が、笑いながら言った。

「なーんだ、そんなことで落ち込んでたの?良いじゃん、後輩君。君、まだ一年生なんだから。赤点の7つや8つあってもどうってことな、」

「ちょっと待って下さい。違いますよ。別に赤点があって落ち込んでるんじゃありません」

7つや8つって、それはいくらなんでも多過ぎでしょう。どうってことありますよ。

違います。天方部長と一緒にしないでください。

「え、違うの?」

「違います…。赤点はありません」

全部黒点で、何なら全科目平均点を超えています。

そうじゃなくて…。

「その…今日掲示板に貼り出された、成績上位者リストの結果が…」

「小羽根君、何番だったの?」

こてん、と首を傾げて久留衣先輩が尋ねた。

…無邪気に聞いてきますね。久留衣先輩…。

あんまり言いたくないんですけど…。聞かれてしまったら、答えない訳にはいかない雰囲気…。

「その…。学年で…4位でした…」

「学年!4位!」

ちょっと、天方部長。大声で復唱しないでください。

余計情けなくなってくるじゃないですか。