そして、いよいよ高校生として初めての定期試験が始まった。

手応えの程は…と言うと。

バッチリ!余裕!とまでは行かないまでも…精一杯、ベストを尽くした。

試験の全日程が終わると、心底ホッとした。

試験中の部活動は休みだったから、先輩達の様子は分からなかったけど。

試験最終日の放課後から部活動が再開されたので、その日、早速部室に顔を出すことにした。




すると、そこは軽くお通夜みたいな空気になっていた。

「終わった…」

魂が抜けたような表情で、椅子に座ってぼんやりと虚空を見上げる天方部長。

…目に生気が宿っていませんね。

彼の言う「終わった」は、試験が終わったという意味ではなく。

詰んだ、という意味での「終わった」なんだろうと思われる。

その死んだ顔を見れば、一目瞭然ですよ。

「…駄目だったんですか?天方部長…」

「一学期の中間試験だぜ…?普通最初の試験は手加減してくれるもんだろ…?教師の奴ら、優しさってもんを知らないぜ」

挙げ句、先生方に愚痴っている。

「先生方は悪くありませんよ。真面目に試験勉強しなかった部長が悪いんです」

「言うねぇ君!でも、人聞きの悪いことを言うのはやめてもらおうか」

え?

「いつから、自分がノー勉で試験に臨んだと錯覚していた?自分だってな、ちゃんと勉強くらいしたっての」

「あ、そうなんですか…。それは失礼しました。試験直前まで意味不明な俳句を書いていたから、てっきり…」

「失敬な。普段おちゃらけてるように見えて、やる時はやるって評判なんだからな、自分」

それは知りませんでした。

普段おちゃらけてるから、常におちゃらけているものだとばかり…。

「ちゃんと、試験の前日に…一夜漬けして臨んだからな」

ドヤァ。

あっ…。結局一夜漬けだったんですか?

「…その一夜漬け、成功したんですか?」

「それが不思議な現象が起きてな?オールで勉強しようと思ったら、突然、机の上が散らかってるのが気になって…」

あっ…。

自分の書いた俳句みたいな状況に陥ってる。

「一回気になっちゃうと、片付けないことには落ち着かないだろ?だから、まずは片付けから始めることにして…」

「…それから?」

「机の上は綺麗になったけど、今度は横の本棚が散らかってるのが気になって…」

…エンドレス。

非常に不味い、愚かな負のループに陥ってしまっている。

それは、一夜漬け失敗のパターンですね。

「本棚を片付けて、よし、いざ勉強を始めようと思ったら…今度は、唐突に強烈な眠気に襲われてな?」

あっ…。

…何だかもう、オチが見えてきた。

「これほど眠かったら、勉強しても頭に入らないと思って…仮眠しようと思ったんだよ。30分くらい仮眠して、起きてから始めようと思って。ちゃんとスマホのタイマーを設定してから寝たんだぞ。それから…」

「…で、起きたら朝の5時だった訳ですね?」

「惜しい。朝の7時だった」

…そんなことだろうと思いました。