それでも見物する人は減らず、無数のカメラが職務質問される竹内の様子をリアルタイムでネットに流し続けている。
 それを横目に、葉月は秀に感謝の気持ちを伝えた。

「ありがとう、上屋敷くん。私の事も、会社の事も、ずっと守ってくれてありがとう」

 ありがとうなんて言葉だけでは表しきれないくらい、葉月の胸は感謝の気持ちでいっぱいだった。伝えなければ破裂しそうなくらい、沢山の気持ちが葉月の胸の中にある。

「私、会社が倒産した時、上屋敷くんの事を恨んでいたの。なんて酷い事をするんだって」

 それを聞いた秀が苦笑する。

「でも、違ったんだね。上屋敷くんは私の事を守ってくれていた。竹内(あんな人)の所に嫁ぐなんて絶対嫌。上屋敷くんが居てくれなかったら私、もっとずっと酷い事になっていたと思う。ありがとう、上屋敷くん。助けてくれて、ありがとう」

 秀の手が葉月の頭に伸びる。葉月の髪の上を、秀の手が滑り降りた。