すみません、と頭を下げる秀に、葉月は思わず抱きついた。

「上屋敷くん、何も謝る事なんてないじゃない。私を守ってくれて、会社を守ってくれたのは上屋敷くんだよ。ありがとう!」

 葉月にはもう、秀に対して感謝の気持ちしかない。

「おい! 抱き着くな!」

 竹内が叫ぶ。
 秀は軽く葉月の頭をなでてから、竹内に向き直った。

「竹内さん。不正をしたのはあなたです。俺や源さんを脅すのはお門違いですよ」
「うるさい、うるさい! ボクが『上屋敷は不正を知りながら、買収で全部もみ消した』とマスコミにバラせば、お前だってタダでは済まないんだぞ!」

 竹内は性懲りもなく秀を道連れにしようとする。けれど秀は、気にも留めずに言った。

「どうぞご自由に。今の会話はすでにネットに拡散されていると思うので、今さらです」
「は? ……は?」

 我に返った竹内は周囲を見渡した。ここは駅ビル内。多くの人が、大騒ぎする竹内と秀、葉月にスマホを向けている。

「だ、大丈夫なの?」

 葉月はだいぶ前からこの状況に気付いていた。竹内の醜態は確実にネットに流れている。同時に、上屋敷ホールディングスが不正を無かった事にした事実も流れてしまっているはずだ。

「構いませんよ」

 けれど秀はやっぱり気にしない。