「葉月さんの家庭を滅茶苦茶にしてしまった事は、本当に申し訳なく思っています。ミナモトは倒産するかもしれない。そう思いながら無謀な買収をしました。葉月さんを嫁がせたくなくて、竹内を手中に収めコントロールしようとしたんです」

 秀は後悔も決意も入り混じったような顔をして、淡々と当時の事を語った。騒ぎ続ける竹内を軽蔑するような目で睨みつけ、また葉月に優しい眼差しを向ける。

「本当はミナモトに対して、すぐ助け船を出す予定でした。万が一ミナモトが倒産なんて事になったら、ミナモトの社員皆さん、葉月さんも含めて、俺の所に来てもらおうと思っていたんです。……でも、5年もかかってしまいました」

 ミナモトの倒産を聞いて秀が動き出した頃には、すでに源家は一家離散の状態だった。足取りを追えなくなった秀は、葉月たちを見つけ出すまでに5年もかかったと言う。
 5年は、長い。
 葉月が勝手に秀を恨んでいた間、秀は一生懸命葉月たちを探していた。それだけ秀は必死だった。
 秀のおこなった買収は、会社の成長のためだけではない。葉月の将来や尊厳を竹内から守り、ミナモトを不正から守るための買収だ。色んなものを守るための、勇気ある行動。

(本当に、なんて人なんだろう、この人は)

 こんな事を出来る人が、他にいるだろうか。