父は目を見開いた。

『ふざけるな! 何故そこに娘が出てくる!』

 だが竹内はニヤニヤと妄想を広げ続ける。

『いや、名案じゃないか? 罪を肩代わりしてくれたら、すぐにでもボクが葉月嬢と結婚して養ってあげよう。もし肩代わりせず倒産の道を選ぶなら、ミナモトを潰して葉月嬢だけ貰う。男として、葉月嬢を悲しませるのは不本意だ』

 竹内はニタニタ笑いながら、『どうする?』と父に突き付けた――。





「不正を肩代わりしなければ会社を潰す。肩代わりしてもしなくても、葉月さんを嫁にする。そんな無理難題を、竹内さんは源さんに提案したそうです」

 その話を聞いて、葉月はゾッとした。この竹内という男、人の人生を勝手に決めておいて、運命だなんだと騒いでいたのか。怖い。怖すぎる。葉月は秀のスーツをしっかり掴んだ。

「その話は当時高校生だった俺の耳にも入ってきました。だから俺は決めたんです。――買収を」

 買収と聞いて、当時の事が葉月の脳内でフラッシュバックする。突然何もかも失ったあの日。だけど、その実態は……。

「俺は買収で不正な事業を白紙にし、株式会社竹内の力も奪う事にしました。葉月さんを渡さないために」

 そう。葉月を救うためだったのだ。
 秀の話をさえぎるように、竹内が「このクソガキが!」と叫んでいる。