「じゃあ、不正を指示していたのは、株式会社竹内?」

 葉月の問いに秀が頷く。

「そうです。しかし株式会社竹内は、すべての罪をミナモトへなすりつけようとしました」

 秀の指摘に、竹内は大きく騒ぎ始めた。秀に顔を近づけ、ツバを飛ばし続ける竹内を、秀はものの見事に無視している。

「竹内さんは5年前、源さんに対し、『お前が不正を主導した事にしろ』と肩代わりを要求しました――」





 当時、竹内は父に言った。

『不正を肩代わりしろ。非難の矢面に立てってくれるなら、万が一ミナモトが倒産する事になっても、立ちなおす為の資金援助をする』

 それを受けて父が言う。

『出来ません。我々は被害者です。不正はしていない』

 父は拒絶。だが竹内は諦めない。

『拒否するのか? だったら我々はミナモトとの取引を停止する。ついでに、ミナモトの取引先もすべて我々が奪ってやる。拒否したらお前たちは倒産するだけだ』

 反論できず唇をかむ父に、竹内は悪魔のささやきをする。

『倒産したくないだろ? 娘に苦労をかけたくないだろう。大丈夫、罪をかぶってくれれば助けてやる。あぁ、そうだ』

 話しながら、竹内がニヤリと笑った。

『ついでに、可哀想な娘……葉月嬢はボクが貰ってあげる。心配いらないよ』