「6年前、株式会社竹内の製品に不正疑惑が出ました。使用している部品の材質が、製品説明と違うという話です」

 株式会社竹内は、自社製品を樹脂素材不使用として販売していた。だが実際には、安い樹脂素材製の部品を使用していたのである。

「その樹脂部品を作っていたのはミナモトコーポレーションでした」

 そう言われて、葉月はドキッとした。不正な品物を作っていたのは事実なのか、と膝から崩れ落ちそうになる。

「ですが、安心してください、葉月さん。ミナモトに『樹脂製で』と指示を出していたのは竹内です」
「え?」
「源さんは注文通りの部品を作っていただけ。源さんは、不正を知らなかったのですよ」

 秀はタブレットを操作して、当時竹内がミナモトへ送った注文書や図面を表示して見せた。これらは父が秀に提供した物だと言う。
 竹内からの注文書には、はっきりと「樹脂部材」と書かれていた。父が注文通りに製品を作っていた証拠である。