「あの、どうして私の事を?」

 駅ビル内の狭いコーヒーショップ。葉月は至近距離に座る竹内に、恐る恐る尋ねた。竹内は甘そうなフローズンドリンクを片手に、ニヤリと歯をむき出して笑う。

「ボクと葉月嬢は運命で結ばれてるからさ! 当然、何でも知ってるんだよねぇ」

 ぞわっ、と、葉月は全身に鳥肌が立った。「運命」だなんて気持ち悪い。初対面で言って良い言葉ではないはずだ。

「あ、葉月嬢。その顔はボクたちの運命を信じていないのカナ?」

 顔を引きつらせる葉月に対し、竹内が身を乗り出す。葉月は思わず身を引いた。

「笑ってよ、葉月嬢。本当ならキミは今頃、ボクの赤ちゃんを産んでたんだよ。何人かな? 3人が良いかな?」
「はい?!」

 竹内はぽっちゃりした頬を揺らし、ニタニタ笑う。

(あ、赤ちゃん?!)

 気持ち悪い。
 気持ち悪い!
 気持ち悪い!!

 脂肪たっぷりの竹内が、ただただ気持ち悪い!

「やめてください! なんなんですか、一体!」
「何って、酷いなあ葉月嬢は。それが『夫』になるはずだった相手に言う言葉かな?」

 竹内は葉月の手に自分の手を重ねた。