「なんですと?」
葉月と父は同時に秀の顔を見た。秀は淡々とカバンから書類を出しテーブルに広げている。
「新しい事業部の立ち上げに際し、源さんに部の責任者を任せたいのです」
「……なぜ私に」
「以前ミナモトコーポレーションが担っていた製品作りを再開しようと考えているからです」
「なに?」
父の目の色が変わる。葉月も息をのんだ。
会社を潰しておいて、その事業を再開させる?
だったら最初から潰さなければ良かったのに。そんな気持ちが葉月の胸を駆け巡る。
潰さなければずっと幸せだったのに――。
嫌な空気になりつつある中、秀は説明を続けた。
「源さんはもしかしたらお気づきかもしれませんが、5年前、あの時はどうしても買収という手を使わなければなりませんでした」
秀の言葉に父が一瞬動揺したのを、葉月は見逃さなかった。
「ただ、我々上屋敷ホールディングスといたしましても、株式会社竹内とミナモトコーポレーションでおこなっていた事業は継続すべきだと考えています。ですから、『例の件』が片付いた今、再開のために動き始めました」
眉間にしわを寄せ黙りこむ父と、そんな父をまっすぐ見つめる秀。
「『例の件』って?」
葉月が秀の放った単語に触れる。しかし父と秀は説明してくれなかった。
葉月と父は同時に秀の顔を見た。秀は淡々とカバンから書類を出しテーブルに広げている。
「新しい事業部の立ち上げに際し、源さんに部の責任者を任せたいのです」
「……なぜ私に」
「以前ミナモトコーポレーションが担っていた製品作りを再開しようと考えているからです」
「なに?」
父の目の色が変わる。葉月も息をのんだ。
会社を潰しておいて、その事業を再開させる?
だったら最初から潰さなければ良かったのに。そんな気持ちが葉月の胸を駆け巡る。
潰さなければずっと幸せだったのに――。
嫌な空気になりつつある中、秀は説明を続けた。
「源さんはもしかしたらお気づきかもしれませんが、5年前、あの時はどうしても買収という手を使わなければなりませんでした」
秀の言葉に父が一瞬動揺したのを、葉月は見逃さなかった。
「ただ、我々上屋敷ホールディングスといたしましても、株式会社竹内とミナモトコーポレーションでおこなっていた事業は継続すべきだと考えています。ですから、『例の件』が片付いた今、再開のために動き始めました」
眉間にしわを寄せ黙りこむ父と、そんな父をまっすぐ見つめる秀。
「『例の件』って?」
葉月が秀の放った単語に触れる。しかし父と秀は説明してくれなかった。