ダイニングへ戻ってきた秀は、相変わらずニコニコしながら葉月の前に淹れたての珈琲を置いた。
「今日はモカをハイローストしたものです。どうですか。良い香りでしょう」
「本当、良い匂い」
葉月が香りを堪能し珈琲を味わう姿を、秀が穏やかな笑顔で眺めている。いつくしむような眼。優しい笑み。一緒に生活を始めて一か月がたち、毎日毎日浴びせられるこの熱い視線にも、葉月はようやく慣れてきた。
とはいえ。
「見られてると気になるんだけど」
「すみません。朝から源さんを独り占めしている事が嬉しくて」
ニコニコ、ニコニコ。
秀はずっとこの調子だ。ドラッグストアの一件以来、秀は遠慮なく葉月に甘い言葉を吐いてくる。
「そういうの、やめてって言ってるのに」
「嫌です。俺は自分の気持ちに正直に行動したいので、源さんが受け入れてください」
「なにそれ」
でも、最近の葉月は彼のその強引さを心地よく思っている。
(上屋敷秀は私の仇なのに……)
彼を少しずつ認め始めている自分が、葉月はちょっとだけ嫌だった。
「今日はモカをハイローストしたものです。どうですか。良い香りでしょう」
「本当、良い匂い」
葉月が香りを堪能し珈琲を味わう姿を、秀が穏やかな笑顔で眺めている。いつくしむような眼。優しい笑み。一緒に生活を始めて一か月がたち、毎日毎日浴びせられるこの熱い視線にも、葉月はようやく慣れてきた。
とはいえ。
「見られてると気になるんだけど」
「すみません。朝から源さんを独り占めしている事が嬉しくて」
ニコニコ、ニコニコ。
秀はずっとこの調子だ。ドラッグストアの一件以来、秀は遠慮なく葉月に甘い言葉を吐いてくる。
「そういうの、やめてって言ってるのに」
「嫌です。俺は自分の気持ちに正直に行動したいので、源さんが受け入れてください」
「なにそれ」
でも、最近の葉月は彼のその強引さを心地よく思っている。
(上屋敷秀は私の仇なのに……)
彼を少しずつ認め始めている自分が、葉月はちょっとだけ嫌だった。