「いいよ、安いやつで」
「いえ、俺がこれを使って欲しいんです」

 秀は有無を言わさず一番高いシャンプーとコンディショナーを買い物かごに入れた。

「ちょっと……」

 葉月は戸惑いつつ、胸が熱くなるのを感じた。自分にお金をかけるのは久しぶりだ。自分を大事にする感覚がむず痒い。

「……無駄遣い」
「どこがです? 必要でしょう」
「でも、こんなに高いやつは必要ないよ」

 彼の厚意を素直に受け取れない葉月を、秀は真剣な表情で真っ直ぐに見つめた。

「貴女に相応しいのはこの商品です。俺はそう思います」

 それだけ言うと、秀はフイッと顔をそらして先に進んでいってしまう。

「ふ、相応しいって……なんなのよ、もう……」

 葉月の頬がジリジリと熱くなる。火照った頬を手のひらで冷やし、葉月は秀の後を追いかけた。