父の経営するミナモトコーポレーションは、取引先だった株式会社竹内と良い関係を築いていたと聞いている。竹内の求める製品をミナモトが製造し、互いに利益を伸ばしてきたのだ。
 しかし上屋敷ホールディングス、いや、秀の立ち上げた事業部が株式会社竹内を強引に買収、子会社化。そして、すべての事業を白紙にしてしまった。まるでミナモトを廃業に追いやろうとしているみたいに――。

「あなたは金に物を言わせて、悪魔みたいにそれまでの関係を全部潰したそうじゃない!」
「そうですね」
「そうですね?」

 しれっと答える秀に、葉月は苛立ちを隠せなかった。
 この男が余計なことをしなければ、ミナモトコーポレーションはもっともっと成長していたかもしれない。
 葉月だって高校を辞める必要はなかったかもしれない。
 今とは違う人生があったかもしれない。
 握ったこぶしがワナワナと震える。

「よくも私の前で平然と悪意を認められるわね。そんなにミナモトコーポレーションを、私の人生を壊したかった?」

 葉月の問いかけに秀は初めて視線をそらした。肯定も否定もしない彼の姿は、限りなく肯定に近いと感じる。