……でも、このままでは私の心臓がもたないわ! とにかく落ち着かないと!

 そっと自分の頬に両手を添える。

 真っ赤になっているだろう私の頬は、熱かった。

 のろりと立ち上がり、鏡の前で移動する。

 鏡に映る自分の姿に、さらに顔を赤らめた。

 あのまま唇が重なったら、きっと私の思考はショートしていたでしょうね……と他人事のように考える。

 だって、他人事のように考えないと、それこそショートしそうだったから!

 深呼吸、深呼吸。

 スーハースーハー。

 あれ、逆だっけ?

 積極的なレオンハルトさまに翻弄(ほんろう)されている気がする!

 そのおかげで、アデーレやダニエル殿下のことが気にならなくなっているような。

 あ、もしかして、私が彼らを気にしていたから!?

 自分を見てほしいというレオンハルトさまのアピール!?

 ……いや、それは私の願望に過ぎないわね、うん。

 しっかりしなさい、私。

 レオンハルトさまに三日あればと伝えたのだから、今から用意しなくては。

 両親はびっくりしちゃうかもしれないけれど、一刻も早くこの王都からフォルクヴァルツに向かいたいという気持ちは嘘じゃない。

 もう一度深呼吸。

 鏡の中の自分を見て、少しは赤面が良くなったかな? と思うタイミングでメイドたちを呼んで、荷造りを始めた。