一人で王城に向かうのはちょっと……いいえ、かなり勇気がいるからね。

 ダニエル殿下とバッタリ会うかもしれないし……それは()けたかった。

 まぁ、おそらく……彼も私に会いたいとは思わないだろうけど。

 一方的に婚約破棄を宣言したのはあちらだし、デイジーさまもそれを理解しているから、『愚息』なんて言ったんだろう。

「お役に立てたのなら、良かった。エリカは少し休んだほうが良いと思います。顔が赤いですし」

 それはあなたのせいです、とはさすがに言えなかった。

「そ、そうですわね。食事の時間まで休みますわ。レオンハルトさまは?」
「オレも休ませてもらいます。あ、紙とペンをお借りしても良いですか? 手紙を書きたいのです」
「それは構いませんが……手紙、ですか?」
「ええ。エリカとともにフォルクヴァルツに向かうことを、先に知らせておこうかと」

 当たり前のように言われて、思わず目を大きく見開く。

 レオンハルトさまの描く未来の中に、私がいることが嬉しい。

 嬉しいけれど、それをさらりと告げられると、反応をすぐに返せなくて困ってしまう!

「それに、すぐ出発の準備をしたほうが良いでしょう?」
「……はい。フォルクヴァルツに向かいたいです」
「最短で何日あれば準備を終えられますか?」
「……三日ほどあれば、準備を終えられる自信がありますわ」
「なら、三日後にフォルクヴァルツに向かいましょう」