レオンハルトさまは私の肩を掴んで、空いている手で頭を撫でた。それから、ふわりと優しく微笑む。

「あなたのことは、オレが守ります」

 柔らかい表情で紡がれた言葉に、思わず息を()んだ。

「だから、そんなに心配そうな顔をしないでください」

 頭に置かれた手が、頬へ移動する。

 こつん、と額と額が重なり、一気に体温が急上昇した気がする。だって、顔だけじゃなくて、身体全体が熱い。

 好みのタイプの人に触られて、顔色を変えないなんて、私には無理な芸当だったんだわ……!

 真っ赤になった私に気付いて、レオンハルトさまの目が細められる。

 ゆっくりと、顔が近付いて――……あと少し、というところで馬車が止まった。

「ついたようですね」

 何事もなかったかのように、レオンハルトさまの顔が離れる。

 心臓がバクバクと爆音を奏でているのを、私は「ぁ、ぅ……」と言葉にならない声を発しながら、なんとか落ち着こうと深呼吸を繰り返す。

 もう少し、屋敷につくのが遅かったら――と、そっと唇を指でなぞった。

「エリカ?」

 いつの間にか馬車の外に出ていたレオンハルトさまが、私に手を差し伸べている。

 その手を取って、馬車を降りた。

 心臓はまだ早鐘を奏でているけれど、差し伸べられた手を掴まないなんて選択肢、私にはないの。