デイジーさまとのお茶会が終わり、私とレオンハルトさまは屋敷に戻る。

 その帰りの馬車の中で、真剣な表情で問われた。

「王妃殿下との会話で、エリカの不安は解消されましたか?」

 ドキリ、と鼓動が跳ねる。

 ――私は、そんなにわかりやすい顔をしていたのかしら? 淑女(レディ)(たしな)みとして感情を隠す特訓はしていたのだけど……ここでなんのことでしょうか、と白を切るのは悪手よね。

「――まだ、少し気になるところです。フォルクヴァルツに無事につくまで、油断はできないと考えています」
「なにを恐れているのかを聞いても?」
「アデーレさまが、塔で大人しくしているでしょうか……」

 一番の不安はそこなのよね。

 自分がヒロインだと知っている彼女が、このままフェードアウトしてくれるかしら?

 あの不思議な力にまだ目覚めていない彼女が、これからどうなるのかもわからない。

 ゲームでは、ダニエル殿下と結ばれた時点で目覚めているはずなのよ。

 攻略対象との愛が彼女に振力を授ける――だったかな。

 もうほとんど覚えていないから、曖昧だ。

 レオンハルトさまは少しのあいだ黙り込み、それから顔を上げて「ちょっと失礼します」と私の隣に座った!

 ヒェェ、間近で見てもなんて綺麗な顔! じゃなくて!

「れ、レオンハルトさま……?」