「それはまた、男爵令嬢とは思えないですね……」
「ダニエルはどうしてあんな子を選んじゃったのかしら。まったく、女を見る目がないのだから。……その点、フォルクヴァルツ辺境伯は良いタイミングだったわね」
「お見合いの相手がエリカ嬢で驚きましたよ」

 デイジーさまに爽やかな笑顔を見せるレオンハルトさま。

 その笑みを見て、デイジーさまはマカロンを手にして、ぱくりと口に入れてから大きくうなずく。

「エリカ嬢との婚約破棄の話は、一瞬で広まったものね。あのパーティーに記者が呼ばれていたみたい」
「そうだったのですか……?」

 考えてみれば王族であるダニエル殿下が卒業するのだから、当然かも?

 それを記事にしたいときていたのかもしれない。

 それがまさかの婚約破棄騒動。

 号外は飛ぶように売れたと教えてもらったけれど、本当かしら?

「……あなたたちは、いつフォルクヴァルツに向かうの?」
「用意ができたら、すぐにでも」
「そう。寂しくなるわねぇ……」

 デイジーさまが頬に手を添えて小さく息を吐く。

 それでも、最後には笑って、

「幸せになりなさい、二人とも」

 ――そう、祝福してくれた。

「ありがとうございます」

 レオンハルトさまと言葉が重なる。

 デイジーさまは目を丸くして、それから「お似合いの二人ね」と言ってくれた。